小野麻美/美嶺

●小野麻美 with 美嶺 A Whiter Shade of Pale 青い影~Shinsyu Jazz Min Live Series (1枚組、税込2,000円)→購入する

小野麻美さんを最初に聴いたのは2017年初秋の滋賀県近江八幡市<YUGEYA>さんでのライブ、その魅力に惹かれてしまった。 最近のJAZZピアノは男女を問わず「カッキンコッキン型」か「癒し系サラサラ型」が多い中、彼女は「自己耽溺(たんでき)型」の傾向でコレはメロディも大切にするJAZZファンには嬉しい。左手の動きも活発、ナンと言っても音色に混濁感がなくキレイ。「溜め」や「間」の取り方にその思いが見てとれる。

ある日、京都<le club jazz>での藤井美智さん進行役のセッションに誘って行ったのだが、偶然美嶺さんの初めてのセッション参加の日で、彼女「キャラバン」を超高速バイオリンで一気に弾いてヤンヤの喝采を受けて後、ナゼか私たちの席に来てくれた。邂逅(かいこう)、以来小野さんと意気投合することになる。

 その後若干の紆余曲折を経て2018年9月にDUO録音のため松本入りしてくれたものの収録へのコダワリから曲数が少なく、小野さんのみ11月に再び松本に来て貰って出来上がったのがこのCD、幾つかは私の偏見に満ちたリクエスト、そして彼女のオリジナルで構成させて頂いた。 ソロ録音のときはとても「ノリノリ」、一気に12曲を弾き、1日の予定が2時間で終わってしまった。実は軽い慣らしをと、前日夕刻にスタインウェイの調律にも立ち会ったが、右端2鍵の微妙な動きに問題があり、この修復は止むを得ず先送りされてちょっと無念。

「青い影」はロックの「プロコルハルム」が大当たりを取った名曲。JAZZピアノソロでの演奏は編成で「目玉」にしたかった。続く彼女のオリジナルも不思議な引力で聴いてしまう…全79分強の内容。でもクドく繰り返すようなメロディは無い。美嶺さんとの収録は少なくなってしまったのが少々残念、彼女は未知の可能性に満ちた逸材。

 ところでこの頃、小野さんは入籍した。その喜びが溢れる演奏で『今できる精一杯』だと。彼女、こう言うと叱られるかも…だがどう見ても売り込みが下手ゆえにライブ数は限られ、どこかに純粋過ぎる面があるのでヒトから見れば身勝手とか我儘と誤解され易い。ゆえに知名度はそう高くないが、3歳でピアノを始めた彼女のスタイルはライブ会場でも熱心な女性ファンが多い。