CD紹介

●山田貴子 p/ 類家心平 tp Live in Kyoto ~ Shinsyu Jazz Min Live Series
※1枚組、2,000円(税込)

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十数年にわたり共演を重ねてきた類家心平さんと私・山田貴子デュオでのライブレコーディングのお話を2019年に頂きこの作品への参加となりました。
松本の老舗ジャズ喫茶エオンタ45周年記念コンサートに出演させて頂いた事がご縁となり、〈信州JAZZ民〉水谷秀夫さんより今回のお誘いを頂きました。

当初レコーディングは2020年の予定でしたがCOVID-19による史上最大のパンデミックのため2度も延期、2021年10月ついに京都のBonds Rosaryにて満席のお客様のなか敢行する事ができました。コロナ禍に於いて世界が疲弊していたとき、このような企画のおかげで自身のモチベーションをキープしつつ各地でお待ち頂いていた皆様にライブをお届けできました。苦しい時ほど音楽が必要であるという事をこれほど感じた事はありません。どんな時も世の中から音楽が消える事はないのでしょう。
今回、偉大なミュージシャン達が繋いできた歴史を受け継いでいきたいという想いから名曲スタンダードと共にキース・ジャレットやポール・モチアン、ジョージ・ガーシュウィンなどを選曲。唯一のオリジナルは遠く会えない人へ向けて書いた〈Hasu -蓮 -〉に想いを込めて…。

生音の臨場感たっぷりに録音してくださった信州JAZZ民・水谷秀夫さんとスタッフの皆様、友人Kelton Boyer、京都Bonds Rosary、松本Storyhouse、松本EONTA他、この作品に関わって頂いた全ての方々に感謝いたします。

        2021年10月 pianist 山田貴子

●異彩トリオ Diango ~ Shinsyu Jazz Min Live Series(1枚組、税込2,000円)→ 購入する

 異彩トリオ/Djangoの制作にあたって

2年前、JAZZ縁つながりのご紹介で松本市に隣接する塩尻市出身のヴィブラホン・マリンバ奏者YUKARIさんのミニアルバム制作を手伝いました。彼女の、30代前半という若さ-と小柄な体型から予想もしない演奏っぷりに瞠目、その後数回ライブを聴くうちに「逸材」と言える奏者…と自信を持ちました。あの赤松敏弘さんの門下の愛弟子のようでもあり、演奏では彼女の曲への思い入れと4本のマレットから発してくる音にジャズこころが強く共鳴したのです。


 まず関西デビューをと考え、京都le club jazzの藤井美智さんのセッションでデビュー、その場でも大いにお客様を沸かしました。この会場で、私とは6年前くらいから面識があり、今や更に腕を上げて京都・滋賀で高い評価を得ているテナーサックス奏者/西村有香里さんが同じ「ゆかり」で初対面となりました。

 西村有香里さんはピアノの小野麻美さんとの優れた共演も多く、小野さんはJAZZ民既発の<青い影>でもピアノへの耽溺ぶりが聴く者の気持ちを捉えます。それは他の2人に全く共通の『ひたむきさ』でもあり、この「異彩」としか表現できないトリオの編成で過去の名曲の演奏にもコダワリをもつ信州JAZZ民の盤を作りたいと強く思うに至りました。

 このトリオ演奏は全員未体験な部分が多いものの「やってみよう」が「やりたい!」に次第に変化し、2019年6月に大津市で初めて音合わせに集まり、曲目も大体決まったトコロで10月には京都祇園<Bonds Rosary>さんのご好意で急遽ライブを開催、そして本番は長野県安曇野市の<あずみ野コンサートホール>で11月4日のライブ開催となりました。


  会場はJAZZ会場としては長めの残響とピアノのベーゼンドルファーがやや個性的ではあるものの、客席にはテナーを中心にヴァイブもピアノもとても心地よく響きます。
トリオ主体の中にソロも盛り込んで自身の音への思い入れを高め、どの曲を取り上げても繊細さに大胆さの加わった女性トリオゆえの華麗さにも溢れた演奏です。


 CD化に当たってはライブから奏者の意向で2曲を外して1枚とし、ミキサーは8本のマイクからの編集を約1ヶ月かけて何度もやり直して原盤を作成、会場のライブ感を全くそこなうことなくシステムから聴けるよう苦労しました。ミキサーも監修の私も、真空管オーディオ愛好者としてのチェックを心がけ、過去の著名ライブ録音のアナログ盤から学んだものを少しでも生かそうと努力をして仕上げた1枚です。ソフト制作者が聴き手としても長いキャリアを持つのが信州JAZZ民CDです。

●藤井美智 Quintet ~ Shinsyu Jazz Min Live Series(2枚組、税込2,500円)→ 購入する

2019年2月9日 京都 le club jazzにて収録

 藤井美智のライブは信州JAZZ民の本拠地松本で2013年から二回主催しCD化したのですが、事情からそれを廃盤にしてこの盤を作ることになりました。彼女たちはその間6年に更に円熟味を増し、私たちには関西固有の色彩感ある演奏を今こそ記録に残したいとの思い入れもあり、藤井の希望でレギュラーのカルテットに京都で共演も多いテナー篠崎雅史が加わってくれました。

 実は藤井美智は数日前から急にオーストラリアで多編成バンドのCD制作への参加を懇願招請され、ライブ前夜は思いもかけない徹夜作業だったとか…マウスピース奏者にそれは過酷、少々コンディションを気遣いつつの演奏でしたが、その緊張も始まってしまえば本拠地ゆえの開放感が支配してご来場のお客様も聴き入るほどになって行ったのでした。

 選曲は信州JAZZ民からのリクエストが数曲を占めます。藤井の低く沈み込んで落ち着いた抑制の効いた音色に、音数は少ないもののバークリー日本最初の女性ペッター卒業というキャリアが示すように実に豊かに表れ、その空気感を角田の繊細なピアノを中心とするトリオがしっかり支えています。サックス篠田との相性は実に「聴きもの」で、2管のソフトで厚みのあるアンサンブルが楽しめました。

 JAZZの本質・本流を行く極上の心地よさ、退屈しない選曲と程よい1曲の演奏時間もあってあっという間でした。

佐藤直樹 

(敬称は略す)

●藤井学 QUINTET ~ Shinsyu Jazz Min Live Series(2枚組、税込2,500円)→購入する

 この作品は2016年9月10日、松本市音楽文化堂/ザ・ハーモニーホール(小ホール)での収録です。現代では珍しいホールステージでの演奏です。このホールでも会場はアンプラグド(拡声装置を使わない)として「生おと」をお客様にお愉しみ頂くと共に、CD作成のための収録を大切にしました。

 CDはファーストステージとセカンドステージの2部2枚組の構成です。リーダーの藤井学との出会いは<俵山昌之クインテット>で述べています。メンバーは藤井学/d・奥村晶/tp・近藤和彦/sax・椎名豊/p・中林薫平/bのクインテット、当日会場で全員が揃う…というほど多忙なメンバーなのでした。

 演奏はどの曲どのパートをとっても抑制の利いた秀逸なもので、聴かせどころの多いものとなっています。このCDは2016年秋には一旦販売していますが、それは彼らのライブ会場やHPを通じてのもので、一般の皆さんへの販売は今回が初めてです。

 (文中では敬称を略しました)

(文中では敬称を略しました)


●小野麻美 with 美嶺 A Whiter Shade of Pale 青い影~Shinsyu Jazz Min Live Series (1枚組、税込2,000円)→購入する

 小野麻美さんを最初に聴いたのは2017年初秋の滋賀県近江八幡市<YUGEYA>さんでのライブ、その魅力に惹かれてしまった。 最近のJAZZピアノは男女を問わず「カッキンコッキン型」か「癒し系サラサラ型」が多い中、彼女は「自己耽溺(たんでき)型」の傾向でコレはメロディも大切にするJAZZファンには嬉しい。左手の動きも活発、ナンと言っても音色に混濁感がなくキレイ。「溜め」や「間」の取り方にその思いが見てとれる。

 ある日、京都<le club jazz>での藤井美智さん進行役のセッションに誘って行ったのだが、偶然美嶺さんの初めてのセッション参加の日で、彼女「キャラバン」を超高速バイオリンで一気に弾いてヤンヤの喝采を受けて後、ナゼか私たちの席に来てくれた。邂逅(かいこう)、以来小野さんと意気投合することになる。

 その後若干の紆余曲折を経て2018年9月にDUO録音のため松本入りしてくれたものの収録へのコダワリから曲数が少なく、小野さんのみ11月に再び松本に来て貰って出来上がったのがこのCD、幾つかは私の偏見に満ちたリクエスト、そして彼女のオリジナルで構成させて頂いた。 ソロ録音のときはとても「ノリノリ」、一気に12曲を弾き、1日の予定が2時間で終わってしまった。実は軽い慣らしをと、前日夕刻にスタインウェイの調律にも立ち会ったが、右端2鍵の微妙な動きに問題があり、この修復は止むを得ず先送りされてちょっと無念。

「青い影」はロックの「プロコルハルム」が大当たりを取った名曲。JAZZピアノソロでの演奏は編成で「目玉」にしたかった。続く彼女のオリジナルも不思議な引力で聴いてしまう…全79分強の内容。でもクドく繰り返すようなメロディは無い。美嶺さんとの収録は少なくなってしまったのが少々残念、彼女は未知の可能性に満ちた逸材。

 ところでこの頃、小野さんは入籍した。その喜びが溢れる演奏で『今できる精一杯』だと。彼女、こう言うと叱られるかも…だがどう見ても売り込みが下手ゆえにライブ数は限られ、どこかに純粋過ぎる面があるのでヒトから見れば身勝手とか我儘と誤解され易い。ゆえに知名度はそう高くないが、3歳でピアノを始めた彼女のスタイルはライブ会場でも熱心な女性ファンが多い。