ホテル・ブダペスト

 ある人のサイトを見ていて、ウェス・アンダーソン?はてどこかで聞いたような…。調べてみると『ホテル・ブダペスト』の監督だった。この映画は確かそのころまだたまに通っていた京都の大学の用事が空いた時に「みなみ会館」という老舗の映画館で見たのだった。長野にも古くからやっている映画館があるが、京都にもあるんだなあ、と感激しながら。

(アマゾンより)

 さてこの映画。とてもいい映画だったことは覚えている。社会主義の時代、ナチズムの時代、それ以前の古き良き時代の雰囲気が、独特の「作り物」っぽい映像で綴られていた。しかも結構、ドキドキするところや笑いもあって、エンターテインメントとしても楽しい。

 「革命前に生きたことにない人に、人生の甘美さは分からぬ」とフランス革命期の外交官のタレーランはいった。この映画も旧世紀の甘いスイーツのような幸福な日常が崩壊していく20世紀の激動を描いているのだが、夢のような作り物のような映像がタレーラン的な述懐を想起させる。激動の時代を生き抜いた人間が、あとから回顧すると悪夢も含めて「夢」のように思えてくるということなのだろう(人生は夢の如し)。この着想はエミール・クストリッツァ監督の『アンダーグランド』ともどこかで通じる。両方とも東欧が舞台だし。