斎藤幸平『人新世の「資本論」』集英社新書

 リベラリズム(自由主義)とは何か?シンプルに言って議会制民主主義と市場経済の組み合わせであって、この枠組みの内部で平等を重視する左派(ケインズ派)と自由を重視する右派(新自由主義派)が対立するというのが大まかな構図だ。

 ところが今「リベラル」を唱える人たちは多くは、実在した抑圧体制としてのコミュニズムばかりでなく、ユートピア思想としての「コミュニズム」を忘却している。もともと彼らは左派政党の支持者だったはずで、そのことを知っているはずなのに!これでは「右傾化するはずだ」と思って、あるところでチラッとそのことを話した。

思えばリベラリズムは誕生から右と左に挟まれ、英米では主流だったが、苦しい立場だった。現在でもリベラリズムは、フェミニズムや南側諸国、少数民族、エコロジーから挑戦を受け続けている実に苦しい立場に変わりはない。最後のエコロジーからは、「リベラリズムは地球資源が無限という前提がある」(加藤尚武『新・環境倫理学のすすめ』)と批判され、対してエコロジーは「地球全体主義に陥らないか」(長崎 浩『思想としての地球』)と反批判されてもいるし、「地球温暖化は人間の仕業」という通説に異議を唱える科学者もいる(池田清彦『環境問題のウソ』)。