Claude Autant-Lara,Le Rouge et le Noir,1954

スタンダールの『赤と黒』を映画化。歴史家のホブズボウムが『資本の時代2』で述べているように、フランス革命を経験した社会では成り上がりの可能性を開いた。これは福沢諭吉も似たようなもの。この話はそこに女性が絡んでくるところがポイント。しかも不倫。映画では大胆にも夫人の部屋に忍び込んでいる。

 夫人と別れ、別の貴族女性と結婚することになり(ここの件は変にモテすぎで、しかも軽薄)、出世が目前に迫るも、夫人の嫉妬ゆえの告発によってその結婚と出世が破たん。男は逆上して夫人を狙撃し(だが夫人は無事)、裁判では死刑判決が下る。

 ところが、元不倫相手の夫人は、男に刑が下されるまで付き添う。彼女は「男が神のようだ」といい、男はそれに至福を感じる。キリスト教に対する挑戦のような言動だが、愛が身分の象徴でもある宗教を超えた瞬間だ。